ヴァッレ・ダオスタ)を取材で経巡ったことがある。期間は約3週間。レンタカー
を借り、通訳とカメラマンを引き連れ、右側通行の馴れない道をおっかなびっくり
走ったのである。
取材は『ミシュランガイド』に載っている星付きレストラン(1つ☆~3つ☆)を
めぐり、取材撮影したものを記事にして、豪華グルメ本の全集を出しましょう、
というバブル景気の金余りをそのまま本にしたような企画だった。
味覚音痴のボクなんかにつとまるのかしら、と不安でいっぱいだったが、
もっともらしく書くのがボクの得意技なので、なんとか重い職責を果たすことができた。
←3つ星の『マルケージ』を記事にしたもの。
その北イタリアが、いま大変なことになっている。
現在、新型コロナウィルスの感染者が1万5000人を超え、
死者は1016人(3月13日現在)となった。北部3州だけで死者の90%を占める、
というのだから尋常ではない。
この急速な感染拡大を受けて、イタリア政府は8日、ミラノ、ヴェネツィアなどを
含む北イタリアを封鎖するという首相令を発令、1600万人に移動制限がかけられた。
命令に従わないと罰金はもちろんのこと、3カ月~4年の禁固刑が科せられるという
厳しいものだ。しかし、その翌日の9日、今度はイタリア全土の移動制限にまで
発展。この急展開は、医療崩壊を防ぐため、としている。
イタリアは日本と比べて病院の数が少なく、
住民1000人当たりのベッド数が0.7。
日本が13.1、ドイツ8.0、アメリカ2.8、イギリス2.5と比べても異常に少ない。
重篤な感染者がいっぱい出てきたら、すぐにお手上げになってしまうのだ。
イタリアと我が家はなにかと関わりが深い。
長女の留学先は北イタリアはトリノ近郊の小さな町だったし、
ベテラン料理記者の女房は、イタリア料理の取材を最も得意としている。
おまけに少しくらいならイタリア語を解する。
ボクはというと、上記のように取材で訪れているだけでなくプライベートでも
旅行している。また、数年前には長女が世話になったホストファミリーの
長男A君が、友人2人を伴ってわが家を訪ねてきてくれたことも。
←ボクの左隣りがホストブラザーの
A君。みんなよく飲み、よく食った。
酒は日本酒を気に入ってくれた。
先日、長女がホストファミリーのM家に連絡を取ったところ、
まだ今のところ元気にしているが、先が見えないので不安だ、
と嘆いていたらしい。イタリア人はハグしたりキスしたりと
〝濃厚接触〟そのものが文化なので、「2メートル以内に近寄らないで」
といっても、実践するのは難しいだろう。それに規則を平然と破るのが
イタリア人気質。ボクはそんなちゃらんぽらんなイタリア人気質が大好きなのだが、
さてさて感染が終息に向かうのはまだまだ先のようである。
Forza Italia!! イタリア、がんばれ!
ところで、豪華グルメ本全集(全12巻、12万円)のその後だが、
本が発刊される頃にはあいにくバブルがはじけ、一気に不況のただ中に。
全集はまったくといっていいほど売れなかった。
とんだくたびれ儲けだったが、星付きレストランで毎夜豪勢な料理を堪能できたのは
生涯の思い出。一回の取材費で300~500万円くらい使い放題だったのだから、
もうめちゃくちゃである。
ボクはその後、スペインとドイツでも同じような取材で豪遊してきたので、
トータルでは1000万円以上散財したことになる。
日本人が狂喜乱舞して常軌を逸してしまった、あのバブル景気はいったい
何だったんでしょうね。
←陽気なイタリア野郎たちと
大合唱。それにしてもよく飲み、
よく食った。みんなヒゲ面だから
ヒゲ面4人男って感じ。
嶋中労さま
返信削除おはようございます。
この新型コロナウイルスはイタリアをはじめヨーロッパ全体で猛威をふるい
あちこちで非常事態宣言や国境封鎖が起きてしまっています。日本国は恵まれています。
そして『あのバブル景気はいったい何だったんでしょうね。』と同じように、
あの新型コロナウイルスはいったい何だったんでしょうね。となるまでは四半世紀近い
時の流れが必要となるのでしょうか。
今後のことはどのようになるかはわかりませんが、改めて日本国に生まれ育ったことに
感謝しなくてはなりません。
ありがとうございました。
田舎者様
返信削除ボクもまったく同じことを考えています。
日本に生まれてほんとうによかったと。
島国というのも理由としては大きいですね。
地続きだと人間もウィルスもどんどん入ってきてしまう。
あと日本人は比較的決まりを守る従順な性格、というのも大きい。
イタリア人やイラン人は決まり事を守るというのが生来苦手らしいです。
この先どうなるのか全く予断を許しませんが、
今年いっぱいはこの狂騒劇が世界中で繰り広げられるんじゃないかしら。
平凡で健康な生活がどれほど貴重なものか、
みんなイヤというほど思い知ったんじゃないですか。