世の中、右を見ても左を見ても〝スマホ中毒患者〟ばかりである。
電車内は言うにおよばず、横断歩道を渡っている時も、
自転車に乗っている時もスマホが手離せない。
先日、赤ん坊をだっこしながら横断歩道を渡っているヤングママさんを
見かけたが、このママさん、一時停止をしない左折車に危うく轢かれそうになった。
そうなったら赤ちゃんもろともイチコロである。
緊急連絡が入っているのならともかく、なぜ四六時中スマホとにらめっこを
していなけりゃならないのか。スマホを持たないボクにはさっぱり理解できない。
二宮金次郎は寸暇を惜しんで読書にいそしんだ。薪を背負い四書のひとつ『大学』
を誦す子供の頃の像はあまりに有名だが、歩きながら読書する姿は〝歩きスマホ〟
を誘発するとして栃木県の某小学校はこの像を撤去、代わりに座って本を読む
金次郎像が登場したという。その学校では日頃から、「ながら行動」はしないように、
と厳しく指導しているらしい。
本好きのボクからすると、電車内から読書をする人が払底してしまったのは
いかにも淋しい。ほぼ90%以上の乗客がスマホをいじっている光景は
外国人観光客も一様に驚くらしいが、かなり異常だ。その延長線だと思うが、
今時の大学生の2人に1人は、1ヵ月に1冊も本を読まないといわれている。
これほどまで本を読まない学生を〝学生〟と呼んでいいのだろうか。
明治・大正期は〝書生〟と呼ばれていた連中である。書を読まない書生なんて、
悪い冗談でしかない。
「日本人の電圧が急激に下がりつつある」
と司馬遼太郎は嘆いたものだが、まさにそのことが現実になろうとしている。
スマホは確かに便利には違いない。
パソコンの携帯版ということだから、あの中には何でも詰まっている。
カミさんなんか、わからないことがあるとすぐスマホを手にとる。
辞書代わりに使っているのだ。また写真や動画を撮るなんて朝飯前だから、
〝一億総カメラマン〟が出現したのに等しい。有名人が隠れて逢瀬を愉しもうと
思っても、周りじゅうがパパラッチだらけなので、下手をするとすぐ「文春砲」
の標的にされてしまう。クワバラクワバラ、なのだ。
ボクは骨がらみのアナログ人間なので、当面、スマホは持たないだろう。
いや、機械に弱いから「持てない」というのが正直なところだ。
先だって、わけあって電子本を読んだ。知り合いがシベリア抑留体験を電子本に
まとめたというので、いわばお義理で読ませてもらった。正直言うと、疲れた。
内容は興味深いものであったが、パソコンの画面で活字を追うことに
心底疲れてしまったのだ。齢のせいか、近頃は視力も落ち、ディスプレーを
長時間眺めていると目がショボショボする。
アナログ人間から言わせてもらうと、「読むんだったら紙の本が断然いい」
ということだ。小学生の頃から万の単位の本を読んできたので、
本は指に唾をつけてめくる(汚ったねぇ?)というのが習慣になってしまっている。
マウスでクリックしてめくる、という読書法につい拒否反応を起こしてしまうのだ。
あと十数年したらこの世からオサラバするので、
死ぬまで〝アナログ人間〟のままでいたい、と思うのだが、
世間がそれを許してくれるかどうか。現にボクの周囲のものは
「せめてスマホくらい持ってよね」と陰に陽に圧力をかけてくる。
意外や、スマホを持ったとたんに〝中毒患者〟になったりして(笑)。
実はそのことを内心恐れているのである。
なにしろ有言不実行のいいかげんなヤツだからね、ボクは。
そのうち『スマホ万歳!』などという記事を書くに決まっている。
ダメだ、こりゃ。
←薪を横に置き、座って本を読む金次郎
嶋中労さま
返信削除おはようございます。
定かではありませんが、WHOには世界人口削減計画なるものが存在していて
ワクチン接種により本来人間が持ち合わせている免疫力を低下させることを
狙っているとのことをパソコンにて読んだ記憶があります。
それらを踏まえるとスマホ中毒の人間を作ることで人間の生きる知恵を奪う
ことは簡単なのではないでしょうか。
人間が生き抜くためには外に求めるだけではなく自分の内側に創意工夫を
求めなくてはならないのではないでしょうか。
こんなことを書いた田舎者はすでにパソコン中毒なのです。
ありがとうございました。
田舎者様
返信削除WHOの話は〝とんでも話〟のたぐいでしょうね。
裏でとんでもないことを考えている連中はいつの時代にもいますが、
さて、ほんとうのところは分かりませんね。
スマホを与えて知能程度の低い〝クルクルパー〟を増殖させるという計画は、
もしかするとあるかも(笑)。実際、効果は出てきていて、
中毒患者はみな痴呆のような顔をしてるじゃないですか。
本を読まない人間、すなわち教養(教育ではない)のない人間は、
5分話すと分かりますね。知のバックボーンがスカスカなんです。
ボクは長いこと記者稼業をしていますから、いろんな人と会いますが、
〝クルクルパー〟はすぐ分かります。タチの悪いのは教育があって教養のない人。
東大出でそういう人がいました。学歴と教養はまったく別物で、
学校なんか出ていなくても教養のある人はいっぱいいます。
スマホとにらめっこしていても教養は身に付きません。
情報をいくら頭に詰め込んでも教養にならないのです。
そこはやっぱり良書にふれて自ら考えたり、教えられたりしないとムリです。
人間たちは驕り高ぶっているから、神様がスマホを与え、
ひとり残らずクルクルパーにしてしまおう、という壮大な計画かも知れません。
「機械アレバ必ズ機事アリ」
『荘子』に出てくる言葉で、機械に頼った生活をしていると、
心まで機械に操られ、しまいには道を見失ってしまう、という意味であります。
昔の人はいつだっていいことを言います。
嶋中労さま
返信削除おはようございます。
「機械アレバ必ズ機事アリ」が気にかかりパソコンにて検索をしてみますと
労さまの師でいらっしゃる山本夏彦さんが好んでよく使っていた言葉である
ということも知ることができました。
スマホやパソコンの無い生活はこれからの時代には考えられません。ただそれに
頼るだけではなく、いつどのようなことが起きても対応できる知識、理系だけではなく
歴史や哲学もふくめた総合的な教養が重要であることを教えられたのです。
ありがとうございました。
田舎者様
返信削除ボクは昔から機械に弱く、商売道具のパソコンもようやくこなしている、
という状況です。家の電気やガスに関しても、こっちはサッパリなので、
すべて女房に任せています。
ボクは人間が大雑把にできているのか、細かいことになると途端に関心が弱まります。
ご多分にもれずラグビーの〝にわかファン〟ですが、細かいルールはわかりません。
わかろうともしないのですから、ほんとうにものぐさ太郎なのであります。
女房は逆に徹底的に調べまくりますので、ラグビーの試合中に分からなくなったら、
「あれがなんでファウルなの?」などとすぐ訊きます。ふつうは男がルールを
知っていて女房に教えるものでしょうが、うちは逆なんです。
頭の出来が女房のほうがはるかに緻密にできているんです。
ボクは21世紀にはふさわしくない人間です。
時代と共に生きようと思っていないのですから当然でしょうね。
山本夏彦は「テレビは百害あって一利なし」と言っていました。
ファックスも使いかたが分からず、社員に笑われていたといいます。
老荘思想に影響を受けた人ですから、そもそも文明の進歩というものを認めていないのです。
ボクはその夏彦翁の弟子。スマホに縁がないのは当然なのです(←開き直っている)。
次に会ったときは歴史や哲学の話をしましょうね。
小野豆腐の〝哲ちゃん〟の話じゃないよ(笑)。