数年前まではよくテレビを観ていた。
アメリカの『NCIS(ネイビー犯罪捜査班)』がひいきで、
マーク・ハーモン演ずるリーダーのギブス捜査官を中心に、
トニーやマクギー、ジヴァやアビーといった個性豊かなメンバーが
脇を固めている。ほとんど笑わないギブスは年齢が近いせいか、
ふしぎに親和性を覚えたものだ。
MLBもよく観た。日本のプロ野球にはまったく興味はないが、
イチローや大谷が活躍するMLBは迫力があって面白かった。
過去形にしたのは、今はほとんど観ないからだ。
観ようという気力がウソみたいに無くなってしまった。
加齢による好奇心の減退なのだろうか。
今、テレビは観ることはみるが、ニュースしか観ない。
テレビをつければバラエティと称するバカ番組ばかりで、
司会者にしろ出演者、コメンテーターと称する連中にしろ、
ほとんどがお笑い系の芸人かタレント、それと〝オカマちゃん〟一色になっている。
テレビ番組がここまでお笑い系に席巻されている国は他にあるだろうか?
ボクはヒマなおじさんだが、お笑いタレントやジャリタレのつまらないコメントを
聞かされるほどヒマではない。左翼人士が集まる関口宏司会のバカ番組
『サンデーモーニング』では、元プロ野球選手の張本勲が偉そうに「喝ッ!」
などと叫んで、上から目線で説教を垂れている。選手時代は好きな選手の一人
だったが、テレビで「喝ッ!」を連呼するようになってから、
一気にきらいになってしまった。
〝アッコ〟などと呼ばれ、姐御風を吹かしている和田アキ子も大きらい。
あの口を尖らしてしゃべる品のないご面相もきらいだが、自民党の総裁選について、
「こんなんでいいのかね?」
などと疑問を投げかけ、それをご丁寧にもメディアがひろって、
記事にしているのが気に入らない。テレビタレントふぜいが、
大した知識もないくせに、何を偉そうに、などとボクは思ってしまう。
たけしがこう言った。坂上忍がこう言った。玉川徹がこう言った……。
何を言おうと勝手だが、メディアが取り上げるほどのことかよ、とボクは思う。
ことほどさように、テレビをつければおバカなタレントがしゃしゃり出て、
つまらぬギャグを飛ばしてはギャハギャハとバカ笑い。元スポーツ選手や
元政治家(何か不始末をしでかして辞任に追い込まれた連中)も、
何を勘違いしているのか、コメンテーターの席に陣取って、
いっぱしの正論を並べている。誰が聴くもんか、そんなたわ言!
テレビというメディアは、敗者復活戦を許してくれる温情溢れるメディアで、
「このハゲ――――ッ!」で有名になった豊田真由子議員や、
〝不倫議員〟として名を馳せた宮崎謙介元議員も、今や堂々と出演している。
豊田などはこれ以上ないくらいの笑顔を振りまき、
(私は巷間言われているほどの悪女じゃないんです。ほんとうは善人なんですゥ)
てな調子で、笑顔の大安売りで必死に失地回復を図っている。
かつてテレビは希望の星だった。
『月光仮面』『怪傑ハリマオ』『少年ジェット』『アラーの使者』……。
ボクたち小中学生はどれほどテレビの中のヒーローに憧れたものか。
月光仮面や少年ジェットはホンダのスーパーカブに乗っていた。
今から思えば、
「あれって、新聞配達のおっちゃんが乗ってるバイクだよね」
と、呆れられるような代物なのだが、当時のボクたちの目には
圧倒的にカッコよく映った。月光仮面と新聞配達のおっちゃんとが
重なることはなかった。
テレビと共に青春を過ごしたぼくたち世代は、SNSにお株を奪われた
テレビという媒体に愛想をつかしている。広告料が以前ほど入らない
テレビ各局は低予算でできるバラエティ番組に草木がなびくように
なびいていってしまう。結果、視聴者離れが起き、広告主も離れて行ってしまう。
ボクは『月光仮面』や『隠密剣士』『てなもんや三度笠』といった昔懐かしい
番組の再放送を望んでいる。デジタルリメイクした作品なら、新たなファンも
獲得できるかもしれない。大口あけてバカ笑いしているタレントなんぞの顔を
見るより、どれだけ建設的なことか。
そういえば近くNHKの番組制作者が、わが家に取材に来るという。
料理記者のカミさんに有名シェフの話を聴くためだが、ひと息ついたところで
話に割り込み、『鶴瓶の家族に乾杯』なんかやめにして
(あのいけ図々しい鶴瓶がきらいなのだ)、『月光仮面』を放映してくれ
と頼んでみようかしら。
「えっ、月光仮面って何ですか?」
若い世代だったら、話がピーマンだったりして(笑)。
だめだ、こりゃ。
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