2017年4月5日水曜日

取材する人される人

台東区・日本堤(通称山谷)にある「カフェ・バッハ」は
拙著『コーヒーに憑かれた男たち』(中公文庫)にも出てくる、
いわゆる自家焙煎コーヒー店の〝御三家〟の一つだ。
そのバッハに昨日、久しぶりにおじゃました。

店に入ると、懐かしい顔が笑顔で迎えてくれた。店長以下、スタッフのほとんどは
みな顔なじみで、すっかりご無沙汰のボクを快く迎えてくれた。バッハに来たのは
取材のためだ。いつもならボクが取材させてもらう側なのだが、昨日は逆で、
ボクが取材される側だった。

実は『メトロミニッツ』という雑誌がある。毎月20日、都内の地下鉄駅52駅の専用
ラックで配布されているフリーマガジンで、その4/20発行の号にボクが載るのである。
対談相手はFMラジオ放送「J-WAVE」のナビゲーター・渡辺祐(たすく)氏で、
およそ2時間ほど対談した。

カメラマンも含め、総勢7名がバッハに押し寄せたのだから、
店側としたらたまったものじゃないだろう。撮影している間は、
もろ営業妨害そのものであったが、寛大な店主やスタッフのおかげで、
ぶじ取材撮影を終えることができた。改めて深甚なる謝意を表したい。

バッハ店主の田口護さんは北京出張から帰国したばかり。
聞けば、中国の西太后ゆかりの地・熙和園(いわえん)の近くに、
バッハにそっくりな「黄金時代」という名のカフェを開くのだという。
その開店準備のため上海や北京を経巡っていたのだ。

日本国内にはいっさい支店を持たない田口さんだが、どうやら
中国で自家焙煎コーヒー店のフランチャイズ展開を指導するらしい。
もちろん経営するのは中国の人で、田口さんはあくまでコーヒー焙煎や抽出、
スタッフ教育などの技術指導のみ。田口さんの主要著書『田口護の珈琲大全
(中国語版)は中国や台湾でもバカ売れしていて、彼の地ではそれこそコーヒーの
〝神様〟と崇められている。講演会などしようものなら、数百人が押し寄せ、
アイドル並みの活況を呈するという。




←中国語版の『田口護の珈琲大全』
中国人たちはこの本をボロボロになるほど
読み込むのだという。中国、恐るべし。





ああ、それなのに、田口さんには悲しいくらい商売っ気がない。
ボクだったら「すわっ、ビジネスチャンスだ!」とばかりに
目をギラギラさせるのだが、そうした娑婆っ気がないのだから、
なるほど神様仏様なのである。

さて漫画『あしたのジョー』で有名な山谷地区は、大阪の釜ヶ崎と並ぶ
日本有数の寄せ場で、ドヤ街という日雇い労働者の木賃宿が軒を並べている。
その山谷にも高齢化の波が押し寄せ、ひところの熱気は鳴りをひそめているが、
それでも昼間っから酒をかっ食らって道端に寝ころんでいるおっちゃんたちは
健在で、かろうじて山谷の命脈を保っている、という感じだろうか。

宿泊料の安いホテルも多いせいか、山谷地区は十数年前から外国人旅行者、
とりわけバックパッカーたちの聖地になっているようで、
バッハの近くのビジネスホテルにも外国人旅行者が引きもきらない。
時代の波に洗われ、山谷も変わりつつあるようだ。

繰り返すが、ボクの対談記事が載る『メトロミニッツ』は4月20日に配布される。
都内の地下鉄主要駅には山積みにされ、おまけにタダなのだから、
御用とお急ぎでない方は、ぜひ手に取ってくださいまし。






←これがフリーマガジンの『メトロミニッツ』
という小冊子。

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