2019年10月3日木曜日

「正論おじさん」は人類の敵か?

わが町にもうっとうしい「正論おじさん」がいた。
町のシンボルでもある「県営和光樹林公園」の芝生広場で、
ノーリードで犬を遊ばせている複数の飼い主に向かって、
「規則を守れ!」と猛烈に叱責したおじさんがいたのである。
おかげで犬を連れた愛犬家たちはパッタリ姿を見せなくなってしまった。
早朝、〝激かわ〟のワン公と同じく激かわの〝人妻たち〟とのふれ合いを
楽しみにしていたおじさんはガッカリである。

複数メディアで面白おかしく取りあげられた「正論おじさん」の元祖は、
三重県松阪市の商店街で話題になった人物で、看板が歩道に1㎝でも
はみ出していると無断で撤去、看板を出した店に猛烈なクレームを入れるという。
このため商店街は活気を失い、いつの間にやらさびれてしまった。
おじさんは89歳になる立派な〝じいさん〟だが、法律を楯に一歩も引かない。
現役時代は「最高官庁に勤めていた」と自分で言っているくらいだから、
エリート意識がいまだに抜けていないのだろう。

また路上のライブ活動は違法だ、と女性シンガーのCDを目の前で踏みつけて
問題になったおじさんもいる。これも「正論おじさん」の同類で、
法律の条文に書いてあれば絶対に正しい、と思い込んでいる正義感のかたまりだ。
しかし女性シンガーは事前に警察の許可を得ているかもしれないのだ。
であれば道交法違反にはならないし、憲法21条では「表現の自由」が
保障されている。また事前許可を受けていなくても、周辺の安全や円滑な交通が
阻害されない限り柔軟に対処しよう、というのが警察の立場で、
むやみに禁止したり、ましてや器物を損壊したりはしない。

法律の条文に書いてあることは絶対に正しい、とする教条主義的な考え方は、
専門的な言い方だと「形式的法治主義」というらしい。
一方で現代の民主主義に沿うように、柔軟に対処しようとする
「実質的法治主義」という考え方もある。

和光樹林公園の芝生広場で、それも早朝、人っ子一人いない南端の空き地で、
犬のリードをちょっとだけ放すという行為が、それほど危険なことなのか?
周辺の安全や交通を著しく阻害する行為なのか?
でないとしたら、愛犬家たちを猛烈に叱り飛ばした「正論おじさん」は
現代的な法の解釈、すなわち法律を現実に沿った形で柔軟に解釈しようとする
実質的法治主義に反しているといえる。あまりにガチガチ過ぎるのだ。

こうした正論ばかりを吐いて悦に入っている〝困ったちゃん〟は、
おじさんやおじいさんの専売特許かと思ったら、
「正論おばさんもいるわよ」
と、やはり愛犬家のおばちゃんの一人が言う。彼女は練馬から片道約40分かけて
この和光市の芝生広場まで2匹のワンちゃん(ムギ&ハナ)を連れてきているのだが、
彼女の近所には「正論おばさん」がいて、ノーリードの犬がいるとスマホで撮って、
ご苦労なことに公園の管理事務所に〝写メ〟するのだという。
このありがた迷惑な行為、どこか隣国の〝告げ口外交〟に似ている。

芝生広場に出没する「正論おじさん」の話を他の公園仲間(🚺)に話したら、
「もし嶋中さんが犬たちといっしょにいたら、
そのおじさんも注意をためらったんじゃないかしら」
「……?」
「プッ……見た目怖そうだし、身体がごつくて強そうだしね(笑)」
「…………」

たしかに、いなくてよかったかも。
いたら朝霞警察署で3回目の調書を取られていたかもしれない。
すでにDNAはしっかり採られているしね(笑)。
しばらくは静かにしていよっと。












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