2020年1月18日土曜日

「見かけより中身」はウソ。人は見た目がすべて

文芸評論家の小林秀雄は〝真贋〟にうるさかった。
ある時、友人の前で良寛の作という詩軸を自慢げに披露したのだが、
贋作だよと言下に否定されてしまう。小林はすぐさまそばにあった
名刀の一文字助光を抜き放ち、この掛け軸を十文字に切り裂いてしまう。
友人は歌人・書家として知られる吉野秀雄。吉野は良寛の研究家でもあった。

書画骨董は煩悩の世界と言っていい。もちろんニセ物が多数横行していて、
素人はつい引っかかってしまう。おのれの審美眼に絶大な信頼を置いていた
小林だが、みごとに贋作をつかまされ、自身の未熟さと業の深さに絶望する。

その小林の弟子筋でもある作家の白洲正子は、
人は、見た目がすべてよ
と明言している。白洲は美術評論家・青山二郎の愛弟子で、
書画骨董の目利きでもある。その目利きが、
人間は見た目がすべて、それ以上でも以下でもないと断言している。

人はよく、
「見損なってもらっちゃァ困るぜ!」
などと見栄を張りたがるが、白洲の前でこんなセリフを吐いて強がっても
一蹴されるだけだろう。

ボクも小林秀雄の弟子を自任し、若い時分は全集にどっぷり浸かり、
寝ても覚めても〝ヒデオ・命〟で過ごしてきたクチだから、
真贋に関してはちとうるさい。
目つき・顔つきのよろしくない人物は、たとえ有能で社会的な地位の高い人で
あっても評価は辛口、という主義なのである。
職業に貴賤はない。が、人間には貴賤がある」という考え方だからだ。

第16代のアメリカ大統領・リンカーンにはこんなセリフがある。
〝Every man over forty is responsible for his face〟
40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て、という有名なセリフだ。
リンカーン曰く、人間の顔にはその人の知性や品性、考え方といったものが
余すところなく表れてしまう。人の内面に育まれてきたもののすべてが、
ウソ偽りなく顔の表面に滲み出てきてしまいますよ、
というのだから恐ろしい。

日本でも古来より、
顔立ちは生まれつきだが、顔つきは自身が作りあげるもの』
というような言い方がなされてきた。
立派な顔になりたかったら立派な人間になれ、ということだ。
けだし名言・至言というべきだろう。



元台湾総督府民政長官・外務大臣
などを務めた後藤新平。(いい顔してるなァ)
といつも思う人がこの男。政治家で自民党
副総裁だった椎名悦三郎は後藤の甥っ子に当たる。





自戒を込めて言うのだが、
「こいつはニセ物野郎のコンコンチキだ!」
と軽んじられ侮られないような顔になりたい。
もう手遅れだよ、という声も聞こえてきそうだが、
もう少しだけ頑張ってみるつもりだ。





←白洲次郎&正子夫妻。
旧白洲邸(武相荘)にて。
この武相荘は一度訪ねたことがあるが、
簡素で渋~い田舎家だった










2 件のコメント:

  1. 嶋中労さま

    おはようございます。
    自分の顔とにらめっこをしている田舎者です。

    当たり前のことかもしれませんが、にらめっこをしても自分を客観的に観ようとしても
    観れず。どこか自分を美化してしまう自分です。

    この顔は子供のころから婆さん受けはよいのですが、若いというか同年齢以下の娘さん
    にはモテた記憶がありません。そして今もそうなのです。


    そして本題の本物と偽物なのですが、偽物は本物にはかなわないのです。
    本物は観ていて気持ちがよくなるのです。そして本物は人を引き付けるのです。
    また人間に関して言うなら感謝する心を持ち合わせている人だと思っています。
    いつの日にか自分もそんな人に近づきたいものです。

    ありがとうございました。

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  2. 田舎者様
    中学~高校時代にかけての自分の写真を見てみました。
    目をそむけたくなるような写真ばかりなのです。

    あんな顔をしてたんだ……なんだか情けなくなりました。
    顔の真ん中に「未熟者」という文字が書いてありました。

    今はだいぶよくなっています。
    少しはマシな顔つきをしています。
    「未熟者」の文字は消えたような気がします。

    (小林秀雄のような顔になりたい……)
    というのが若いころからの希望ですから、まだまだ先が長いのです。

    ボクは若者がきらいです。
    顔はもちろん、その言動がすべてきらいなのです。
    未熟であることは決して美しいものではありません。

    テレビでアイドルと称される若い男女を見るにつけ、
    (ああ、ダメだなこいつの顔は……)
    と思ってしまいます。精神の空虚さがすべて顔に出ているのです。

    ボクも50年も前はそんな虚ろな顔をしていました。
    だから、つい顔をそむけたくなってしまうのです。

    顔は問わず語りに、その人の内面を映し出します。
    否も応もなく映し出します。

    鏡を見ると、わが未熟顔にウンザリすることもありますが、
    だんだん許容できるレベルになってきたように思います。

    田舎者さんは初めて会った時、
    なかなかいい顔をしてるじゃん、と思ったくらいですから、
    若い娘にモテないからといって悲観することはないです。
    甘ちゃんの小娘なんかには田舎者さんの駘蕩とした人柄は解らないのです。

    いつも感謝の気持ちを忘れない田舎者さんは、
    きっと仏様のような顔になると信じています。
    南無……

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