2016年8月2日火曜日

下戸ならぬこそ……

毎日、酒ばかり飲んでいる。
「Toriaezuビール」という名のビールでまず喉をうるおす。
あとは「toriaezu日本酒」になったり「Toriaezuワイン」になったりして、
ブレーキが利かなくなる。

父はまったく飲めなかった。
兄弟姉妹がそろって下戸だから、飲めない血筋なのだろう。
母は逆で、めっぽう飲めるクチだった。兄弟も呑み助ばかりで、
母方の祖父は生前、
「死んだら酒樽に入れてくれ」
と言っていたらしい。

そんなわけで、下戸と上戸の血を半分ずつ受け継いでいる。
なぜ酒を飲むのかと問われれば、こう答えたい。
「旨いからに決まってるだろ……」


とにかく酒はうまい。
安酒だってうまい。
ビールもどきの発泡酒だってけっこういける。
ボクはワインが好きで、赤でも白でもロゼでも、何でも来いだ。
品種でいうと、赤ならカベルネよりメルロー、
白ならシャルドネよりリースリングやゲヴュルトトラミネールがいい。

ボクは過去に、仕事でヨーロッパの星付きレストランを30数店舗取材している。
その折、ウン万もする高級ワインを毎晩のように空けた。
そこで分かった。ワインの良否は、「良質な渋み」に在る、と。

しかし今となれば、慢性的な手もと不如意で、高級ワインなんぞ飲めやしない。
仕方がないから、スーパーで1000円前後のワイン、
それもチリ産や豪州産、カリフォルニア産を買っている。〝コスパ〟がいいのだ。
1000円ワインに良質な渋みなど期待しようもないが、
安ワインには安ワインなりのおいしさがある。

酒飲みは下戸に向かってよくこんなことを言う。
「酒を飲まなきゃ人生の半分を知らない」
「この旨い料理を酒なしで食うなどとは冒涜に等しい」と。
下戸は面白くないだろう。

ボクはそんな手垢のついた言辞を弄しようとは思わないし、
酒飲みの舌がとびきり上等なものだとも思っていない。
要は喉元三寸にある粘膜の快楽に淫するだけのことだからだ。

一方で、かの兼好法師は言っている。
男は容貌などより学問があって詩や音楽に通じているのが良いと。
そして、
《下戸ならぬこそ、男はよけれ》
とダメを押す。

下戸の胸中や察するに余りある。






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