2017年6月9日金曜日

みっちゃん 道々 ウ◇◇して……

「またミツルかよ!」
福岡の母子3人殺害事件。犯人は夫で警察官の中田充だった。
「ミツルって名前の奴は悪いことばかりするからな」
ボクはテレビ画面に向かって、吐き捨てるかのように、
まったく根拠のないようなことを口ばしっていた。
ボクはミツルという名前がきらいなのだ。

臆面もないことを言わせてもらうと、ボクは優しい父と母に慈しみ育てられた。
実家はずっと貧乏だったけれど、父と母はボクを大学まで行かせてくれた。
そんな父と母に苦労ばかりかけてしまった。もっと孝養を尽くせばよかった、
と今は後悔しきり。そんな慈愛に満ちた父母に、こんなことを言うのは
まことに親不孝なのだけれど、ひとつだけ気に入らないことがある。
充(ミツル)という名前を付けられたことだ。

ボクの本名は、中田充と同じ「充」という名前なのである。
もっと遡れば昭和41年の「千葉大腸チフス菌事件」というのがあった。
食べ物や飲料にチフス菌を混入させ、患者を発症させた事件だが、
被害者は2カ月間で25人。その年の「10大ニュース」の上位に登場する
くらいのセンセーショナルな事件だった。犯人は千葉大医学部の鈴木充医師。
ボクはまだ中学生だったが、犯人が自分と同じ名前だったことが
よほどショックだったのだろう、今でもこの事件のことをよく憶えている。

実は兄の名前が「実」で、兄弟合わせて「充実」というのが、
親の計らいだったようだ。そういわれれば、親の気持ちもよくわかるのだが、
それならせめて音読みだけでも「ミツル」ではなく「マコト」とか「タカシ」
にしてほしかった。「ミツル」という言葉の響きは、どこかナヨナヨッとした
弱そうな感じがあって、少しも男らしくない。また人生の大事な場面で〝つるり〟
と滑りドジを踏みそうな、運のない名前のような気もするのである。実際、
滑ったり転んだり野壺に落ちたり、ボクの半生はロクなもんじゃなかった。

というわけで、「ミツル」という名前には異常なくらいに反応してしまう
のである。それがまったく根拠のない、こじつけみたいな話だということは
重々承知している。でも、いまだにミツルという名に親しみを覚えないのだから
しかたがない。ミツルという名はたいがい「みっちゃん」などと呼ばれる。
今でも親戚の叔母や従兄弟たちは、ボクのことを「みっちゃん」と呼ぶ。

    ♬ みっちゃん 道々 ウ◇◇して 紙がないから 
      手で拭いて もったいないから 舐めちゃった

そういえば、こんな歌を幾たび聞かされたことか……

親戚の皆さま、あるいは心ある友人たちよ、
どうかボクのことを「ミツル君」だとか「みっちゃん」だとか
〝ウンの尽きそうな名〟で呼ばないでください。ミツルと名をつけられた
人間が犯罪に走ってしまうのも、なんかわかるような気がするのだ。←なんだよ、それ!

ちなみにボクの筆名の「嶋中労」だが、
これは中央公論社の嶋中鵬二社長と〝えんぴつ無頼〟と呼ばれた竹中労を
足して二で割っただけの名前で、ただの思いつきだ。だが、「ミツル」よりは
数段マシなので、仕事上はすべてこの名で通している。

ついでに言うと、この「労」という字だが、漢和辞典で調べると
旧字は「勞」で、会意は火を周囲に激しく燃やすこと、
勞はそれに力を加えた字で、火を燃やし尽くすように力を出し尽くすこと
とある。滑ったり転んだりしているよりは、精一杯力を出し切ったほうがいい。

てなわけで、これからも粉骨砕身、世のため人のために尽くす
所存でありますので、よろしくご指導ご鞭撻のほど……
隅から隅まで、ずずずいーっと御(おん)願いたてまつりま~す。

←ブログの中身とは何の関係もない写真だが、
居間からバルコニーをちょいと眺めてみた。
いま、マルベリーがいっぱい実をつけている。
ボクはそのまま口に放り込むが、カミさんは
丁寧に摘んでジャムにしている。右手に
見えるのは月桂樹(ローリエ)の樹。
ポーチュラカの花ももうじき満開になる。

0 件のコメント:

コメントを投稿