2018年3月7日水曜日

凡夫こそがホトケになれる

8キロ相当のダンベルを背負い、両くるぶしには2キロずつのウエイト。
いつものように三浦雄一郎を気取って散歩していると、ひとりの小柄な
おばあさんが向こうからヨロヨロと歩いてくる。見ると、数メートル歩いたら
立ち止まり、また数メートル歩くと立ち止まって小休止。風の強い日だから、
危なっかしくて見てられない。

「大丈夫ですか? 手をお貸ししましょうか?」
「いや大丈夫です、ハイ……ご親切にどうも」
「転ばないように気をつけてくださいね」
おばあさんは深々とお辞儀をすると、またヨロヨロと歩いていった。

近頃、齢のせいでヤキが回ったのか、やけに心優しくなってきている。
小さな子を見ただけで涙ぐみ、年寄りを見ると背中をさすってあげたくなる。
人妻たちにはハグの報謝をし、ベランダに来る雀たちにはお米をまいている。
以前の欲深なボクなら「雀のお宿」で大きなつづらをお礼にもらうのを夢見て
いたものだが、近頃は物欲も性欲もなくなったせいか、雀たちがただただ愛しい。
もしも宮沢賢治を気取るなら、こんな感じだろうか。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハマダマダアルケレド
決シテソレヲミセズ
イツモヘラヘラワラッテヰル
一日ニ玄米四合ナラヌ
美酒美食美女トイフ煩悩ニ溺レ
アラユルコトヲ
ジブンダケヲ勘定ニ入レ
ヨクミキキシワカリ
ソシテスグワスレ
野原ノ松ノ林ノ陰ノ
〝和光のビバリーヒルズ〟ト呼バレル団地ニ住ミ
東ニ病気ノムスメガアレバ
行ッテ添え寝シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテ〝ヨッコラショ!〟と背負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテモウスグ楽ニナルカラネ、トイヒ
北ニケンカヤ訴訟ガアレバ
勝ツマデガンバレ、トハゲマシ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニ〝木偶ノボー〟トヨバレ
褒メラレモセズ
苦ニモサレズ
サウイフモノニ
モウワタシハナッテマス

もしかするとボクは、知らぬ間に究極の悟りを開き、
即身成仏〟しているのかもしれない。
なんだかホトケ様になったような気がしてならないのだ。

「ケガやら何やらで気弱になり、免疫性が落ちてるだけじゃないの?」
心ない人はそんなふうに思い「ふるさとへ廻る六部の気の弱り」などと
思いきり茶化すかもしれない。でもね、どうも免疫性などという俗っぽい
ものではないような気がするのだ。

平昌オリンピックの日本人選手たちが流した清らかな涙に刺激されたのか、
無垢で清らかな心を持つ「サウイフモノ」にどんどん近づいているような
気がする。日々、即身成仏への途をまっしぐら、という感じなのだ。

法華経ではボクのような凡夫匹夫こそがホトケという最高の人間性を
(あらわ)し得る、というようなことを説いている。
凡夫即仏」というのだそうだ。親鸞の説いた「賢人(善人じゃない?
尚もて往生をとぐいわんや凡人(悪人でしょ?)をや」と同じような理屈か。
これをボクは「凡人正機説」と名づけている(笑)。いずれにしても、
♪あ~りがたや、ありがたや~、あっソレ、あ~りがたや、ありがたや。
南無……




4 件のコメント:

  1. 嶋中労さま

    おはようございます。
    労さまは三浦雄一郎を気取ってのトレーニングですか。田舎者は
    加藤文太郎に憧れて国立までの通勤に15キロのリックを背負い
    通勤した過去があります。

    当時と比較はできませんが、今でも慾の塊を背負って生きています。
    それがふとしたことでリックの蓋を開けて顔をのぞかせ事を起こします。
    ま!凡夫が凡夫するのだからどうしょうもないのですね。

    しばらくすると次々に花が咲き始めます。野点ではなく野酒は
    いかがでしょうか。

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  2. 田舎者様
    加藤文太郎という登山家を初めて知りました。
    山派ではなく海派なもので、山のことはまったく知りません。

    野酒、いいですねえ。
    たまには田舎者さんのご尊顔を拝しながら、一杯やるのも一興ですね。
    日時と場所はそちらにお任せします。
    今月は原稿書きに追われてますので、来月あたりがいいですね。

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  3. しまふくろうさま。
    日々、花粉と闘っては敗けが続いている木蘭でございます。
    そのうえ今日は、
    生木を右足の親指の上におっことしまして。
    相変わらず生傷が絶えません。

    宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」はいいですね。
    賢治はあの詩の通りの人だったそうです。

    しまふくろうさまの「雨ニモ負ケズ」には、
    笑っちゃいけませんが笑ってしまいました。(笑)
    でもとてもいい「詩」だと思います。(*^^*)

    「仏は死人にあらず」と国柱会の田中智学先生の言葉にあるように、
    死んだから仏ということではなく、
    生きているうちに仏になれる(即身成仏)というのが法華経の教えです。
    この末法時代のためにお釈迦様が法華経を説かれましたし、
    煩悩即菩提、生死即涅槃といいます。
    凡夫即仏も同じです。

    しまふくろうさまはすでに悟りの境地。
    私も負けずに頑張らなければ( `ー´)ノ
    ・・・その前に、まず花粉に勝つよう頑張ります。(^▽^;)


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  4. 木蘭様
    ずいぶんお見限りじゃないですか。ボクはずいぶん淋しかった(グスッ)。

    でも花粉症のうえに生傷連打ではしかたないですね。ご同情申し上げます。

    凡夫が成仏できるというのは心強いですね。
    別にホトケにならなくてもいいのですが、
    一度は蓮のうてなに座ってみたいのです。単純な好奇心から。

    地獄の血の海というのもいいな。
    ボクは水泳部出身だから、ぜひともバタフライをやってみたい。

    地獄も極楽もけっこう楽しそう。
    どちらにも花粉症はなさそうですよ。

    木蘭さんと別れ別れになるのは忍びないから、
    がんばって極楽へ行けるように精進します。

    でも輪廻転生だからな、次はゴキちゃんかなんかに生まれ変わったりして。
    そして木蘭さんの鼻先にちょこなんととまったりして……お楽しみに。

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