半年ぶりに病院へ。
血圧の薬が残り少なくなったからもらいに行ったのだ。
病院は歩いて3分のところにある。
最長90日分の薬をもらっていても、服用するのは2日か3日に1度。
ヘタすると1週間くらい薬なしで過ごすことも。
「ダメだよ、毎日飲まなきゃ」
担当医のY先生にいつも叱られる。
診察時に血圧を測ったら、上が186あった。
このご時世だ、病院もコロナを警戒し、臨時の検温用テントを構内駐車場に設けた。
そこでまず検温し、異常がなければ裏口から院内に入る。
待合室で待っていたら、70代半ばのおっさんだろうか、
ビニールで遮蔽された受付の女性が、
「どちら(の診療科)を受けられますか?」
と訊いたら、
「Y先生……」
と面倒くさそうにボソリと呟いた。
「えっ?」
と受付嬢が訊き返すと、
「Y先生といったら内科に決まってんだろ! そんなこともわからんのか!」
と、いかにも不機嫌そうに吐き捨てた。
それを見ていて、(失礼なやっちゃな……)と思ったボクは、
よっぽど注意してやろうかと思ったが、病院内で取っ組み合いを
始めるのも大人気ないので、グッと我慢した(ケンカには前科がありまして)。
(だからおっさんはきらいなんだ……)
自分の気に入らないと、所かまわず怒り出す。
この手の陰気で気短なおっさんが世の中にはウジャウジャいる。
ボクは物おじせず誰にでも話しかけられる性格だが、
こういう陽性タイプのおっさんはそれほど多くはない。
朝の公園にはいろんなタイプのおっさんがいるが、
挨拶しても知らんぷりしているおっさんがいれば、
「君は歩き方が悪いね。もっと背筋を伸ばしてこうやって歩くんだ」
とばかりに、頼んでもいないのに正しい歩き方の講釈を始めるおっさんもいる。
膝の悪いボクはどうしてもびっこを引くような歩き方になってしまう。
人にモノを教えるのが飯より好き、というおっさんは数多いが、
以前、水泳部出身のボクに向かって、バタフライはこうやって泳ぐんだ、
と手を取って教えてくれた親切なおっさんがいた。
ボクは苦笑しながらも「ハイ、ハイ」といって素直に聞いていたが、
このおっさんのバタフライは溺れているかのような悲惨なものだった。
人を見ると教えたくなってしまう。一種の病気なのだと思う。
ボクはその日、おっさんに恥をかかせまいとバタフライを自ら封印した。
不機嫌そうなおっさんは佃煮にするくらいいるが、
不機嫌そうなおばさんはそれほど多くはない。
話しかければふつうに対応するのがおばさんで、
おっさんにはこの〝ふつうの対応〟ができない。
企業人としてはふつうだったかもしれないが、
いざ現役を隠退して一介の社会人になると、
「自分がいかに社会性に欠けているか」を思い知ることになる。
〝社畜〟の期間が長すぎると往々にしてこうなってしまうのか。
ボクは〝おじさん嫌い〟を公言していて、
おじさんはすべからくおばさんになるべし、と説いている。
役立たずのタマタマなんか切り取ってしまえ、というのではない。
おばさんたちの屈託のない〝親和性〟に学べ、と言っている。
話は変わるが、
おっさん嫌いではあっても、高山正之や百田尚樹といったおっさんは好きである。
百田はネット上で「とんでもない右翼だ」などと書かれているが、
彼は、「右翼でも当然左翼でもない、ただの愛国者だ」と言っている。
ボクもまったく同じ。糞ったれ左翼などではもちろんないが右翼でもない。
日本という国をこよなく愛するただの愛国者だ。
ボクは名コラムニスト山本夏彦の弟子を任じているが、
夏彦亡き後は高山正之の押しかけ弟子を勝手に任じている。
となると朝日、毎日といった反日新聞を蛇蝎のごとく嫌っているところも同じ。
この両人の言葉は、まさに寸鉄人を刺すほど鋭い。
しかしその言説の多くに共感できる。
写真の本は昨日読み終わった。
愛する日本にも、バカや偽善者どもはウジャウジャいる。
「人間というものはいやなものだなあ」
とは師匠山本夏彦の口ぐせだった。
いやだけど愛おしい人間。生きていくのは大変です。
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