以前、「イギリス人はドイツ人」という話を書いた。
で、今回は「白人は実は黒人だった」という話をしたい。
サセックス侯爵夫人――誰のことかというと、数日前に結婚した
英国ヘンリー王子の夫人、メーガン・マークルさんのことである。
メ―ガンさんは母親がアフリカ系のアメリカ人、
父親がオランダ・アイルランド系のアメリカ人である。
ロイヤルファミリーに初めて黒人の血が入る、
と賛否両論があった。多様性を重要視する時代だから賛成、
という進歩的意見があれば、黒人のプリンセスなど許されない、
とする保守的な意見も多かった。
白人は人類の中で一番優れている、とダーウィンが登場する前から
白人たちは思っていた。動物の中で人間が一番賢く、その人間の中で
白人が最も優れた人種であると固く信じていたし、
今もそう考えているフシがある。
モンテスキューは『法の精神』の中で、
《黒人が人間だと考えるのは不可能である。なぜなら黄金より
ガラス玉を好むからだ》などと失礼なことを言っている。
で、ギリシャ・ローマ文明につながるエジプト文明を調べれば、
その証拠が見つかるだろうと、王墓を発掘しその壁画をつぶさに観察してみたら、
《王は褐色の肌で、それにまず黒人が列し、次に黄色人が並び、
最後に入れ墨をした白い肌の野蛮人が並んでいた》
これはロゼッタストーンを解読したシャンポリオンが、
その失望を友人に書き送ったものである。
エジプト文明は黒人種のもので、当時は白人種が最も未開の人種であった。
予想外の結果に白人たちはガックリと肩を落とした。
ダーウィンの『種の起源』によれば、猿の毛がだんだん抜けて人類になった
のだという。ところが白人黒人黄色人を並べてみると、一番毛深いのが白人種だ。
つまりダーウィン説によると白人が最も進化の遅れた人種、
ということになってしまう。悲しいかな、これも〝やぶへび〟だった。
人類の祖先はアフリカ・エチオピア高原の黒人だった、
というのが今では定説になっている。その黒人の一部が狩猟の場を求めて
ヨーロッパに渡り、また別の一派は東へ向かった。
黒い肌は紫外線を通さないため、皮膚でつくられるビタミンDがつくれない。
環境適応の視点で考えると、黒人たちはゆっくりゆっくり皮膚の色を適応させ、
白色になっていったと考えられる。黒色から白色になるまでの期間は?
ざっと5000年と考えられている。約5000年かけて黒人は徐々に白っぽく
なっていったのである。
黒人の血を引くメ―ガンさんが英国ロイヤルファミリーの一員になる、
ということだけで大騒ぎしているが、そもそも5000年前に遡れば、
偉そうな顔をしている白人たちもそろって黒人であった。
王室の血が穢れる、などと言っている連中に対して、
ボクは声を大にして言いたい。
「あなたたちの遠いご先祖さんは色がまっ黒だったんですよ!」
実はアメリカにいるボクの従兄弟たちはメ―ガンさんと同じく
黒人の血を引いている。ボクの父方の叔母はアフリカ系のアメリカ人と
結婚したからだ。フロリダで大きな農場を営んでいた叔父と叔母。
すでに鬼籍に入ってしまったが、従兄弟たちはアメリカの国内外で
みな元気に暮らしている。従兄弟の子供たちにはスペイン系もいたりするから、
まさにみな民族多様性を絵に描いたような顔立ちをしている。
ボク自身もフランス人に間違えられたくらいだから、
皮膚の色や見てくれなんて、要はどうでもいいのだ。
ボクは子供の頃、パンに擬して人種の違いを描いた
変わった絵本を読んだことがある。こんな感じだった。
《パンを焼きました。オーブンから出してみたらまだ生焼けでまっ白でした。
再び焼きました。出してみたら焼き過ぎて真っ黒けでした。
こんどは慎重に焼きました。
出してみたらこんがり黄金色のおいしそうなパンでした》。
これとても〝黄色人種優位主義〟の変形バージョンにすぎない。
イギリス人も1500年前はドイツ人だった。時間軸をちょっとずらして
相対化すれば白人も黒人になるし、黄色人だって黒人になる。
ご先祖様が同じという意味では「人類みな兄弟」という言い方は正しい。
たかだか数百年に過ぎない「近・現代」をリードしたからといって、
白人どもよ、あんまり偉そうな顔をしなさんな。
時間軸を少しずらすだけで、優位性などすぐ逆転されてしまうものだ。
大事なのは歴史をつぶさに学ぶこと。その歴史から〝価値の相対性〟
というものを学ぶこと。人類の全歴史において白人が天下を取っていた時期など
ほんとちょっとだけだ。そのことを知らずに上から目線で語ることは、
「私たち白人は無知蒙昧な人種です」と天下に公言しているようなものだろう。
メ―ガンさん、つまらぬ中傷なんかにめげず、どうか幸せになってください。
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