2019年6月12日水曜日

オジサンがオバサンになる時

市の総合体育館へ初めて行ってみた。
65歳以上は筋トレやストレッチ体操などの施設利用と講習が無料なのだ。
で、すでに利用している友人の案内でちょっとだけのぞいてみた。

筋トレルームにはさまざまな器具が並んでいた。
腕力を鍛える器具、足腰を鍛える器具、胸筋を鍛える器具……。
見れば知り合いのおばちゃんたちがいっぱいいる。
同じ団地のおばちゃんたちだ。

ボクはout-goingな性格もあって、知り合いが殊の外多い。
なにしろ近所のスーパーに行くまで(約100㍍)に、
何度も立ち止まらなくてはいけない。
10㍍進むごとに知り合いと会ってひとしきり立ち話をするから、
なかなかスーパーにたどり着けないのだ。

ボクの中ではすでに「オバサン化」が始まっていて、
いまや細胞の80%くらいがオバサン細胞になっている。

立ち話の相手は9割方オバサンだ。
そもそもオジサンは立ち話を好まないし、サマにならない。
それにどこかバカにしているところがある。
「ラチもない話をしやがって……」
自分たちは女どもと違って、もっと高尚な話ができるんだぞ。
おまえたちに天下国家が論じられるか?
などと、オジサンたちは自分たちを高みに置いてオバサンたちを小バカにしている。

ボクは長年オジサンをやってきたが、近頃オジサンに愛想をつかしている。
オバサンのほうが結局偉いんじゃないか、立派なんじゃないか、と思っている。
逆に偉そうにしているオジサンたちがバカに見えてきた。

オジサンたちの顔はいつも外に向かって閉じている。
イギリス人は人を介して紹介されない限り一言も発しないそうだが、
まさにそんな顔をしている。口を真一文字に結び、「おまえは何者だ!」と
誰何(すいか)するような顔つきで、正直言って怖い。

その点、オバサンの顔は外に向かっていつも開いている。
娘時代は閉じていても、オバサンになるにつれて開くようになる
(逆ならいいんだけど……←コラッ! 何考えてんだ!)
こっちが声をかけると「あっらーっ、お久しぶり」などと言って笑いかけてくれる。
オジサンはそうはいかない。たとえ知り合いであっても、
最初はちょっと身構えるようなところがある。
オバサンより警戒心が強い分、顔の筋肉がほぐれるまで時間がかかるのだ。

筋トレルームにいた常連らしいオジサンは、新参者のボクの顔をジロジロ見ていた。
この「人の顔をジロジロ見つめる」という行為もオジサンたちの得意技の一つで、
あんまり気持ちのよいものではない。西洋ではill-mannered(無作法な)の
典型とされ、概ね「無教養な人間のするはしたない行為」とされている。
ところがオジサンにはどこ吹く風、自分こそ世界の中心、と思っているから、
こうした無礼千万なマネだって平気でやる。

オジサンたちは体面が傷つけられるのを極度にいやがる。
だからいつも仏頂面を下げ、「この線から入るな!」とばかりに、
周囲に視えないバリアーをめぐらせている。

オバサンにはこの人を排するようなバリアーがない。
ときどき(私はあなたたち庶民とはお育ちがちがうのよ)といった
〝気取り屋さん〟を見かけることがあるが、あくまで少数派で、
ふつうのオバサンたちは最初から警戒心を解いている。
「みんないらっしゃ~い!」というopen-minded(広やかな心)な精神なのだ。

こんなオバサンたちと、ボクはおしゃべりに興ずる。
「イギリスのEU離脱問題」とか「慰安婦&徴用工問題」といったシリアスな
話題はまず出ることはないが、子供や孫たちの話題だけでも優に10分~20分は
費やしてしまう。下世話な話題だが、じゃあ低俗かというと、そんなことはない。
オジサンたちが論じたがる高尚な話柄も、形を変えた〝自己承認欲求〟みたいなもので、
ほんとうのところ、かなり怪しいものなのだ。

オバサンたちはボクがオバサン細胞の持ち主だと、第六感で感じとるのか、
すぐに胸襟を開いてくれる。なかには「襲ったりしないでよ」と念を押しながら
お茶に招待してくれるオバサンもいる。襲うもなにも80代のオバサンを襲う元気は
もうない。

オジサンに足りないのは屈託のない笑いだ。
腹の底から笑えないのがオジサンの限界か。
いつだって見てくれを気にしていて、自分を相手より高みに置きたがる。

そんな堅っ苦しい裃なんか脱いでしまえ。学歴だの職歴だの、
昔の輝かしい栄光なんかみんな捨ててしまえ。
目の前にいるのは、ただのショボくれたおっさんではないか。
なにカッコつけてんだよォ、このボケ!

ボクはもうじき100%オバサンになる。
もともとオッパイも大きい(胸囲115㎝)からちょうどいいだろう。
口ヒゲのあるオバサンというのも、またご愛敬か。





←こんな本もある。
やっぱ俺は病気だったのか





4 件のコメント:

  1. 嶋中労さま

    おはようございます。
    しばらく更新されないのでどうしたのかと思い考えていたのです。
    生きていてよかった。

    オバサンでもオジサンでも嶋中労さまは嶋中労さま、できれば
    もう少しブログのアップをしていただけたらと思います。

    あー!よかった。

    ありがとうございます。

    返信削除
  2. 田舎者様
    ご心配をおかけしました。とりあえず、まだ生きてます。

    田舎者さんが生きている間は、ボクもしぶとく生きてますからご安心を(ガッカリした?)。

    田舎者さんも田植えが終わってひと安心でしょ?
    ご苦労さまでした。

    ボクは田植えの経験はないけど、けっこうしんどい仕事だろうと
    想像はできます。

    生きてはいるのですが、膝の調子が悪いもので、遠出はしません。
    半径500メートル以内が生活圏です。

    それで別段不満はないし、それなりに楽しく暮らしています。

    田舎者さんと奥さんをそのうち招待します。
    ただ10年後になるか、100年後になるかわかりません。

    田舎者さんは元ソムリエで、奥さまは元パティシエ。
    フランス料理に造詣のあるカミさんと話が合いそうです。

    つい数日前にキッチンのリフォームが終わりました。
    きれいになったことは確かですが、嬉しさも中ぐらいかなおらが春、ってとこでしょうか。

    きれいなままの状態をキープしたいらしく、カミさんから油を使った料理を固く禁じられて
    いるのです。

    いったい何のためにリフォームしたのか、いま煩悶しているところです。
    うちのカミさんは少し変わっているんです。

    割れ鍋に綴じ蓋ですから、文句は言えませんがね。

    ブログの更新は心してがんばります。

    返信削除
  3. しまふくろうさま。
    おこんばんは(^-^)
    なんとか生き延びていた木蘭でございます(^▽^;)
    ご無沙汰のわけは、
    やっと更新したブログに載せてございますので、ご一読をお願い致しますm(__)m

    いいですね~オバサン100%♪
    私はすでに120%超えしておりますので、
    もう少ししまふくろうさまには頑張って頂かねば(笑)

    返信削除
  4. 木蘭様
    いやまあ、大変な目にあわれて……よくよくついてないと言うか、
    世の中の不幸を丸ごと背負って立つ、というところが木蘭さんにはありますね。
    ついでにボクの不幸もそちらに宅配便で送りますので、よろしくお願いします。

    オバサン化率120%ですか……ボクがそこに到達すると200%とか言うんでしょ。
    キリがないんです(笑)。

    でもボクは、世の中のオジサンたちはすべからくオバサン化すべし、という考えを
    捨てませんね。かみしも脱いだオバサン的生き方は、とっても気楽だし、
    誰とでもトモダチになれる。

    オジサンは体面とか過去の栄光とかにこだわりすぎ。
    また〝承認欲求〟も強いから、なかなか身軽になれない。

    ボクなんかいつだってポケットに飴を忍ばせていて、
    会う人ごとに配ってますよ。大阪のおばちゃんは飴をくれるっていうでしょ。
    そのあっけらかーんとした善行を見習っているんです。
    雲水さんに会ったら「ご報謝!」といって飴をあげようかしら(笑)。

    木蘭、がんばれ! 
    いつも〝翔んでる埼玉〟の地から見守ってるからね。

    返信削除