2016年12月19日月曜日

フランス人?のおじいさん

団地内のジャングルジムでいつものように〝ぶら下がり健康法〟を
実践していたら、そばのベンチに腰かけていた「おじいさん」が、
「先週もやっていましたよね」と声をかけてきた。

足首に2㎏ずつアンクルウエイトを装着し、階段を昇ったり鉄棒に
ぶら下がったり……ウエイトトレーニングは毎日欠かさない。
ジャングルジムの端っこにぶら下がり、下半身を振り子のように
左右に振る(1セット約20秒を3セット)運動はかなりきつい。

なにしろ体重が84㎏あり、そこに4㎏のウエイトを着けるから、計88㎏。
それもただぶら下がるのではなく、振り子のように左右に大きく振るのだから
手がちぎれそうになる。でもこれをやると背骨がぐんと伸びるのか、
実に気持ちがいい。

我がいでたちはニット帽にレイバンのサングラス、寒い朝だとマスクを着ける時もある。
「まるでコンビニ強盗だね」といわれたことがあるが、大柄なだけにかなり怖そう。
その怖そうなおじさんに、勇を鼓したか、くだんのじいさんが声をかけてきた。

「ええ、毎日ここでジャングルジムの鉄棒にぶら下がってるんです」
ボクが愛想よく返事をすると、じいさんは安心したのか、
「何かにぶら下がるのは身体にいいって言いますからね」
と相槌を打ってきた。

しばらくたわいのない話をしていたら、突然、
「外国の方ですか?」と訊いてきた。
「えっ? ちがいますよ、純粋な日本人ですよ」
とボク。(さっきから訛りのない美しいニホンゴをしゃべっているじゃないの)
なにトボけたこと言ってるんだよ、このじいさんは。

そうしたらこのじいさん、
「フランス人かと思いましたよ」だって。
なぜ俺がフランス人なんだ? このじいさん、俺をからかってんのか?
まじまじと見つめてしまったが、爺さんはいたって大マジメである。

そうか、ニット帽にサングラス、それにどことなく漂うハイカラな雰囲気。
全身からあふれ出す文化の香りというか、匂うような教養ってものが、
じいさんをして思わず「あっ、フランス人だ!」と言わしめてしまったんだな(フムフム)。
ボクはフランス人に見まちがわれたことに、妙にナットクしてしまった。

じいさんはさらに「失礼ながらおいくつですか?」
と訊くから、「27年の辰年です」と応えたら、「あっ、おんなしだ」

ギョエーッ!
俺はこのじいさんと同い年かよ? ウッソだろ?

フランス人とまちがわれて、ついその気になっていたら、
一気に奈落へ突き落とされてしまった。

女房にこのことを報告したら、
「アフリカ系のフランス人ね、きっと。Alexiaわが家にホームステイしたフランス人女性)が
聞いたら〝お父さん、頭がおかしくなっちゃったの?〟って呆れ返るよ」
とバカにされた。

そうだよな、よほど眼の悪い人か、脳みそパッパラパーのじいさんでないかぎり、
フランス人ですか? なんて訊かないもんね。
ボクの全身から匂い立つような、そこはかとない文化の香りも、
途端に色褪せ、パリ名物の犬の糞のような香りへと脱落していってしまった。

ああ、俺はいつ〝おじさん〟から〝おじいさん〟に脱皮したのだろう。
今夜はショックで眠れそうにない。


※お知らせ
文中、不適切とされる言葉があります。が、わが家はいわゆる
political correctnessを〝偽善〟と考えておりますので
ご了解ください。ついでにいうと米国のaffirmative action
も偽善であります。あれによって人種差別は深く静かに潜行して
しまいました。



←1泊2日の伊豆修善寺への旅行。
伊豆の国・パノラマパークの
ロープウェイ山頂から眺めた
富士山(12月18日)。やっぱり
富士は凛としていていいねえ。
フランス人に生まれなくてよかった(笑)。

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