毎日、酒ばかり飲んでいる。
「Toriaezuビール」という名のビールでまず喉をうるおす。
あとは「toriaezu日本酒」になったり「Toriaezuワイン」になったりして、
ブレーキが利かなくなる。
父はまったく飲めなかった。
兄弟姉妹がそろって下戸だから、飲めない血筋なのだろう。
母は逆で、めっぽう飲めるクチだった。兄弟も呑み助ばかりで、
母方の祖父は生前、
「死んだら酒樽に入れてくれ」
と言っていたらしい。
そんなわけで、下戸と上戸の血を半分ずつ受け継いでいる。
なぜ酒を飲むのかと問われれば、こう答えたい。
「旨いからに決まってるだろ……」
とにかく酒はうまい。
安酒だってうまい。
ビールもどきの発泡酒だってけっこういける。
ボクはワインが好きで、赤でも白でもロゼでも、何でも来いだ。
品種でいうと、赤ならカベルネよりメルロー、
白ならシャルドネよりリースリングやゲヴュルトトラミネールがいい。
ボクは過去に、仕事でヨーロッパの星付きレストランを30数店舗取材している。
その折、ウン万もする高級ワインを毎晩のように空けた。
そこで分かった。ワインの良否は、「良質な渋み」に在る、と。
しかし今となれば、慢性的な手もと不如意で、高級ワインなんぞ飲めやしない。
仕方がないから、スーパーで1000円前後のワイン、
それもチリ産や豪州産、カリフォルニア産を買っている。〝コスパ〟がいいのだ。
1000円ワインに良質な渋みなど期待しようもないが、
安ワインには安ワインなりのおいしさがある。
酒飲みは下戸に向かってよくこんなことを言う。
「酒を飲まなきゃ人生の半分を知らない」
「この旨い料理を酒なしで食うなどとは冒涜に等しい」と。
下戸は面白くないだろう。
ボクはそんな手垢のついた言辞を弄しようとは思わないし、
酒飲みの舌がとびきり上等なものだとも思っていない。
要は喉元三寸にある粘膜の快楽に淫するだけのことだからだ。
一方で、かの兼好法師は言っている。
男は容貌などより学問があって詩や音楽に通じているのが良いと。
そして、
《下戸ならぬこそ、男はよけれ》
とダメを押す。
下戸の胸中や察するに余りある。
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